白雪さんと7人の兄弟
お母さんとお父さん。


私にとっては、願っても手に入らないもの。天星園に入ってからは長いことあの家には帰っていない。売り払うという選択肢もあったけれど、思い出のあの家を捨てることなんて私には出来なかった。

「…妃奈姉?」

「ご、ごめんね紅音ちゃん!ぼーっとしてただけ!手伝うことある?」

「じゃあ卵を。スクランブルで!」

「了解!」

冷蔵庫から幾つかの卵を取り出して、片手でパカパカと割っていく。私の料理の腕前も幾分か上がったようだ。入所した当初は簡単な料理しか出来なかったけれど、料理本や調理系の学校に通う紅音ちゃんのお手伝いもあってなんとかここまで来れた。
歳が下の女の子達の面倒を見なくてはいけないから、いつの間にか一人で生きていく術は身についている。あとは私の身がどちらに向くかを待つだけ。
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