こうべ物語
「悪いな、遅くなってしまって。」
その言葉に即座に首を左右に振る。
「ううん。誠也は忙しいから…。私は…、暇だから…。」
「今日も先輩がうるさくてな。」
「今日もバンドの練習だったの?」
「ああ、今度ライブするらしくて、俺は元々メンバーじゃなかったけど、どうしても参加して欲しいって言われてな。」
「誠也、凄いね。」
「今からも一旦家に帰ってから、また先輩に呼ばれてるんだ。」
「それじゃあ、すぐに行かなきゃ駄目だね。」
「待たせたのに悪いな。」
「ううん。」
「涼子、好きだよ。」
「私も…。」
微笑み合うと、そのまま誠也はまた明日、と言って小走りに去って行った。