こうべ物語



その後ろ姿を見つめながら心の鼓動を必死に抑えると、くるりと背中を向けて駅に向かって歩き始める。


会話の時間2、3分ほど。


誠也の家の近くの公園まで来て、少し話をして家に帰る。


行き過ぎた自宅の最寄駅に向かって地下鉄に乗って帰って行く。


誰かが内緒で話していた内容が聞こえて来た事がある。



『大池さん、絶対、誠也君に遊ばれているよね。』



『だって、普通、自分の最寄駅まで呼ばないよね。』



『大池さんも気付いていないのかしら?』



『ちょっとドジだからきっと分かってないわよ。』



(誰が何と言おうと、私は誠也の彼女。)



少し前までの、俯いて何も出来なかった自分が不思議に思えるくらい、今は自信を持てるようになっている。



(やっぱり、恋って素敵だな。)


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