こうべ物語
「神戸から出て行ってもらう。」
「…。」
「その男は神戸から出て行ってもらうように手配する。」
「ちょっと待って!」
扉を勢いよく開けると、すぐに父親の元へ駆け寄った。
「どうして?どうしてそんな事するの?」
「私の可愛い娘に変な虫が付いたとなれば、駆除するのは当たり前だろうが。」
冷静に答えてくる。
「七海君は何も悪くない。お父様は何も知らないのに、どうしてそんな事勝手に決めるの!」
父親の袖を掴みながら、怒り半分、お願い半分の気持ちで訴える。
「何も知らなくても、分かる。」
「何が分かるのよ!」
「分かる、分かってないのは麻里奈の方だ。」
「…。」
父親は麻里奈の両肩をガッチリと掴むと目線を合わせて問いかけ始めた。