こうべ物語
陽はすっかり六甲山の山間に隠れ、外は暗くなっている。
(七海君…。)
麻里奈は自分の部屋で壁にもたれながら、三角座りをして俯いていた。
父親の話を聞いて、部屋に閉じ籠ってからもう何時間経ったのだろうか?
「ん?」
携帯が足元で震えている。
麻里奈は右手で持つと、画面を開いて確認した。
『麻里奈ちゃん、楽しい事があったみたいだね。また話聞くからね。七海。』
家に戻る帰りの電車の中で送信したメールの返信。
(七海君…。)
じっと、七海からのメールを眺める。
そして…、ある事に気が付いた。
(メールをくれるって事は…。まだお父様に見つかってない!)
居ても経っても居られなくなり、必死の思いでメールを作成し、送信した。
『今から七海君の家に行きたい。麻里奈。』