こうべ物語
6畳一間だけの部屋。
壁は所々剥がれている。
小さな本棚と机。
布団が窓側に畳まれてある。
畳はすっかり黄色くなって、蛍光灯も薄暗くその畳を怪しく照らしている。
物があまりない印象だが、きちんと整理整頓されていた。
「汚い部屋だけど…。」
苦笑いを浮かべながら、七海は押入れから座布団を1つ取り出し麻里奈に座るように促すと、流し台に体を向けてやかんに火をつけ始めた。
「それにしても、麻里奈ちゃん、どうしたの?突然来るって言うから。」
麻里奈に背を向けたまま、問いかける七海。
しかし、麻里奈からの返事はない。
聞いてはいけなかったのかと少し気にしながら七海はお茶を入れる準備を始めた。
「そういえば、今日楽しい事があったんだよね?それって…。」
話している途中で七海の背中に温かい感触が伝わってきた。
麻里奈が後ろから抱きついてきた。
体を密着させて顔を七海の背中に埋める。
「麻里奈ちゃん…。」
「このまま…、暫く居させて。」