こうべ物語
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「送って行くよ。」
座り込んだまま麻里奈が泣いている間、七海は何も言わずブラウスを肩から掛けると、優しく背中を上下にさすり続けた。
ようやく落ち着きを取り戻した麻里奈は、洋服を着て、石屋川駅までしっかりと踏みしめるように歩いた。
「ここで、いいから。」
改札口の前で七海に微笑むと、ゆっくりと通り抜けた。
ホームへと上がる階段の手前で振り向く。
七海が心配そうな顔をしている。
そんな七海に向かって、麻里奈は大きな声で叫んだ。
「何があっても、絶対に一緒に居てね!」
「分かった。」
小さく返事をした七海の声は麻里奈の心の奥まで沁み渡った。
(やっぱり私には、七海君しかいない…。)
誰もいない帰りの電車の中で、麻里奈は改めて幸せを感じる事が出来た。
(七海君…、ありがとう…。)