こうべ物語



筋、関節痛の文字を何度も頷きながら確認すると、自然と笑みがこぼれてきた。



(温泉自体を持って帰りたいけれど、持って帰れるのかな…。)



「ん?」



さくらが自転車を停めて立っているすぐ傍にバス停がある。


その脇に1台の黒のリムジンが停車した。


運転席から、初老の男性が素早く降りて高部座席に回る。


高部座席の扉を開くと、車から1人の女性が降りてきた。



(あ!)



爽やかな雰囲気を出しているポニーテール。


上品さを感じる色白な肌。


初秋らしく、明るめのオレンジのワンピースを着こなしている。



(あの人は…。)



初老の男性が一言二言何か告げると、頭を下げ、再びリムジンに乗り込み折り返して走り去って行った。


大きく伸びをしながら、辺りを見渡す女性。


丁度、見渡した際にさくらと目が合った。



「あ!」



その女性もさくらを見て驚きの表情を浮かべる。


さくらはニコニコしながら自転車を押してその女性の前まで近づくと軽く頭を下げた。


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