こうべ物語





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さくらは麻里奈が有馬温泉に来た際に家族で必ず宿泊すると言うホテルまで連れていかれると、その中のラウンジに腰を下ろした。


麻里奈が座ると同時に、ホテルの支配人が近づいてきて深く頭を下げる。


支配人に向かって苦笑いを浮かべる麻里奈を見ながら、さくらは思わずため息をついた。



「どうしたの?」



「いやぁ、ハーバーランドのホテルの時もそうでしたが、麻里奈さんが行く所全てで偉い人が挨拶に来るなぁって。」



「どこでもじゃないわよ。」



「私、ネットで検索しましたよ。凄いじゃないですか。」



「何が?」



「麻里奈さんの家族ですよ。関西一の大金持ちだって。」



「そんな事ないわよ。」



「だって私のお母さんも押部谷って名前で腰抜かしてましたよ。」



「そんな大袈裟な…。」



いつも言われているのだろう。


凄い、という度に麻里奈の表情が少し曇ったように見えた。


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