こうべ物語
勝利の父親の野球への思い、息子への思い、情熱はさくらもよく知っている。
勝利もまた、父親の思いや、情熱を分かっているだけに、それに答える為、恩返しの為に今まで必死にやっていた事も知っている。
バットで風を切る音が鋭く聞こえる。
(この光景を見れるのもあとどれくらいかな…。)
素振りをする勝利の姿がさくらには他の誰よりも輝いて見えていた。
しかし、愛知県の高校に進学すると聞いた今日に関しては、その姿がとても寂しく映る。
さくらは、心の中に生まれて来た切ない思いに耐えられなくなり、少し俯きながらその場を後にした。
《さくら×勝利① 終わり》