こうべ物語
「分かってるわよ!自分が不甲斐ない事ぐらい!だから、じっと大人しくしていたのに…。皆が私を馬鹿にするんだ。苛めるんだ!さくらちゃんのような恵まれた人には私の気持ちなんて分からないのよ!」
「私、恵まれてないですけど。」
「恵まれているわよ!家族でこうして遊びに来たり出来て。私は1人、誰も周りにいない。」
「1人じゃないじゃないですか。大好きな彼氏がいるじゃないですか。」
「さくらちゃんには私の気持ちなんて分からないのよ!」
まくしたてるように言う涼子に対して、さくらも顔が赤くなり始めた。
「ええ、分かりません!」
「私は…、ずっと地味に生きていたかったのに…。」
「地味だの、不甲斐ないだの。そうやって、いつまでもグジグジしていたらいいんじゃないですか!」
「あんたみたいにしつこく言ってくる人、大っ嫌い!」
「こっちだって、あの時、助けなかったら良かったです!」
「もう、いい!」
声を荒げる2人を、まわりの観光客が冷たい目で見ている。
涼子は周りの目に気付くと、フッと1つ息を吐き、涙を拭きながら、さくらに背を向けて走り去った。