こうべ物語
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さくらと言い合った後、牧場で動物達を見る気が失せてしまったので、入場口を出て帰りのバスが来るまで、じっと俯きながら立っていた。
『大丈夫ですか?』
『体調でも悪いのですか?』
『眼鏡を取った涼子さんを見て、凄く可愛いな、って思いました。』
(私…、あんなに心配して貰っていたのに、酷い事言ってしまったな…。)
後悔の気持ちが大きくなる。
『そうやって、いつまでもグジグジしていたらいいんじゃないですか!』
(そう…、いつもグジグジしてる。ずっと…。)
何度も見上げた鉄人28号。
(でも…、こんな私でもいつか心を強くしたいって思ってたっけ…。心の強さって何だろう…。)
雨の中。
他の女性と一緒に歩いていた誠也。
(本当は…。)
指輪を眺めていた姿。
(どうなんだろう…。)
携帯電話を取り出す。
(自分で確認しなければならないと思うけど…。)
持つ手が震えてくる。
(私なんかが、そんな事しても…。)
『じゃあ、涼子さんもいちいち気にせずに、私は彼女です!ってしっかりしていればいいと思うけどなぁ…。』
(私、どうしたら…。)
《涼子×さくら 終わり》