こうべ物語
「以前、話をしたと思うが、許嫁が麻里奈と直接会って話がしたいとおっしゃってな。私としても、麻里奈が再来年大学卒業したタイミングで、と考えていたから丁度良いと思ってな。今は社長修行を兼ねて大手の貿易会社の営業をされていて、海外の食品を扱っているそうだ。その中でも、特にワインに精通していると伺ったので、今回ワイン城でセッティングさせてもらった。」
「…。」
何も答えようとせず、俯いたままの麻里奈に近づき父親は言う。
「いいか、麻里奈。これは押部谷家にとっても、何よりお前にとってのビックチャンスだ。もう、大丈夫。お前にはしっかりとした許嫁がいるから、何も困る事は無い。しっかりと自分を見せて来るんだぞ!」