こうべ物語
「どうして…、彼氏を探さないのですか?」
「探したわよ!でも、電話も通じないし、家や大学に行きたいけど執事が監視しているから行けないし、どうしようもないのよ!」
「それでも…。」
「何よ!」
「本当に好きならば、自分の人生を切り開くのならば、もっと必死に探すと思いますけど…。」
「何よ!涼子ちゃんに何が分かるって言うのよ!あんただってボロボロになってたじゃない!」
「だから、私は地味に生きて行くって決めたんです。」
「地味に生きて行くなら勝手に生きて行けばいいでしょ!私だって必死になってるんだから!」
語気を強めて言い続ける麻里奈を遮るように、バスが到着した。
「先日は、本当にありがとうございました。」
もう一度、深く頭を下げると、涼子は目を合わせる事無くバスに乗り込んだ。
走り去るバスを見つめながら、麻里奈は拳を握りしめた。