こうべ物語





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



午後7時55分。


徒歩3分。


家から一番近い公園。


街灯が明るく照らしているグラウンド。


その真ん中で、さくらはじっと立っていた。



(あ。)



空を見上げる。



(雨…。)



髪の毛に刺さるように落ちてくる感覚。


さくらは急いで、グラウンドの脇へと避難した。



(雨降るなんて言ってなかったのに~。傘取りに帰りたいけど、その間に勝利が来たら困るし…。)



ひとまず、木がたくさんの葉を広げている陰で暫く待つ事にした。


雨が降ってきたせいなのか、少し肌寒く感じる。



(もうすぐ10月か…。)



夏休みの期間中に愛知へ進学すると聞いてから1ヶ月以上経とうとしている。



(早いものだな…。このまま卒業まであっという間なんだろうな…。)



徐々に雨が激しくなって、木の茂みだけでは賄う事が出来なくなってきた。



(ああ、もう!)



少し苛立ちを感じた時、ふと頭に雨が当たる感覚がなくなった。


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