こうべ物語



時間だけが過ぎて行く。


空は東からかなり暗くなってきた。


待っているとメールを送ってから、返信メールは来ていない。


今日、誠也は先輩に呼ばれているのか、何をしているのか、涼子は何も知らない。


あの日。


他の女子生徒と歩いている姿を見てから、誠也を避け続けてきた。


誠也の顔を見ていると、辛くなるからだ。


周りからは不審に思われたが、結局何をやっても変に思われるのは同じだと割り切っていたので、特別気にしなかった。



(あっ。)



頭の上に何か感じる。


隣で立っている鉄人28号にも何か当たっているのが見えた。


気付いた途端、一気に雨が激しく降りだした。


涼子は持っていた傘を広げ、慌てて軒下へと避難した。


目の前を、傘を持っていないサラリーマン達がカバンを傘代わりに頭の上に当てて小走りに去っていく。



(メール、見てもらえてないのかな…。)



寂しく思う気持ち。



(寂しく思えるのは、私が誠也の事、好きだからなのだろうな…。)



傘に当たる雨の音を聞きながら、少し俯いていると、雨の音の間から、待っていた声が聞こえて来た。


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