こうべ物語
「麻里奈、なんて事してくれたんだ!」
ワイン城での許嫁との顔合わせから3日後。
突然父親に呼び出された。
父親は顔を真っ赤にしている。
涼子と別れてから執事に言われて、渋々許嫁の元に戻った麻里奈はその場ではっきりと言い放った。
『私、あなたの様な無礼で優しさのかけらのない人と結婚する気はありませんから!』
「先ほど許嫁のお父様より、結婚の件は破談にすると連絡があった。」
「それは良かったです。」
「良くない!」
珍しく麻里奈に対して怒っている。
「いいか、この縁談はお前の為を思っての事なんだぞ。無事結婚した暁には、押部谷家全体も安泰になるのに。」
「結局、お父様は家が一番大事なんですよね。」
「どうゆうことだ?」
「私の事を思っているって言いながら、家を守る事が大切って事です。」
「当たり前だろ。我が押部谷家が安泰だからこそ、麻里奈も幸せになれるのだからな。」
「私は、好きでもない人と結婚したくありません!」
扉に向かって歩いて行く。
「まさかだと思うが…。」
父親が静かに問いかける。
「あんな安っぽい男の所に行こうなんて考えるんじゃないぞ。」
無視して歩く。
「まぁ、どれだけ探しても無駄だけどな。」