こうべ物語
「そうしたら、お父さんが僕の前にポンと100万の束を2つ放り投げたんだ。そしてこう言われた。『お前がしている事は、関西全体を動かす事かもしれないんだ。分かったなら、何も言わず去りなさい。』と。」
麻里奈の中で悔しさと辛さと怒りが込み上げてきた。
そんな麻里奈の気持ちを察してか、七海は顔を麻里奈に向けて微笑んだ。
「麻里奈ちゃん、お父さんが悪いんじゃないんだよ。」
「…どうして?」
「麻里奈ちゃんに彼氏がいる事、お父さんに教えたのは実は僕なんだ…。」
「えっ?」
再び目の前のイルカに目線を移し、見つめ続ける七海。
その横顔を信じられないと言った顔で見つめる麻里奈。
「どうして言ったの…?」
「お父さんに認めて貰いたかったんだ。僕のような貧乏学生でもね。」
「お父様は絶対に認めないよ…。だからこうして七海君追い出されて…。」
「それはそれでいいと思ってる。」
「私は良くない…。」
涙が溢れる。
「僕は追い出されても言って良かったと思っている。だからお父さんは悪くない。お父さんは麻里奈ちゃんを守ろうとしただけだから。」