こうべ物語
「肘の具合はどう?」
「痛みは取れないけど、ギブスを外せてから、気持ちがかなり軽くなった。」
「来週、手術だよね?」
「ああ。」
「きっと…、必ず治るから。」
「サンキューな。さくらがくれた有馬温泉の入浴剤、毎日、風呂に入れているんだ。」
「ホントに?嬉しい。」
「俺は愛知に行って…。甲子園に戻ってくる。甲子園のグラウンドに絶対立つんだ。」
「そうだね!」
力強く宣言する勝利の横顔を見つめながら、さりげなく手を近づける。
軽く触れると、勝利も手を出して、自然とお互い握りしめた。
「あとね。」
「うん。」
「もう1つ、約束して欲しい事あるの。」
「何だ?」
一旦立ち止まり、顔を勝利に向けて見つめる。
同じように勝利も立ち止まると顔をさくらに向けた。