こうべ物語
「麻里奈、何かあってからでは遅いんだ。」
「だから、大丈夫だって。」
「いや、しかし。」
引き下がらない父親に呆れながらも、麻里奈は止める言葉も聞かず、玄関へと向かう。
「分かった。車を出すのは止めよう。しかし、今日は授業が終わったらすぐに帰って来るのだぞ。」
「どうして?」
「当たり前だろう。こんな雨なのに。」
「あのね…。」
玄関に向かう足を止め、呆れる様に振り返る。
「お父様、今日はすぐに帰るのは無理。バイトだから。」
その言葉に父親は眉間に皺を寄せる。
「麻里奈、バイトなんてしなくてもいいんだぞ。」
「またその話~。」
少し膨れる。
「何か欲しい物が有るのなら、いくらでも買ってやる。無理してバイトする必要はないんだぞ。」
「もう、お父様!」
ついに口調が強くなった。
「私だってもう20歳超えているんだし、自分の事は自分でやりますし、自分のお金は自分で稼ぎます!」
「私はな、麻里奈の為を思って言ってるんだぞ。麻里奈の身に何かあったら大変…。」
「何もありません!いってきまーす。」