こうべ物語
入場口を入ってすぐにある大水槽に吸い込まれるように七海は近づいて行く。
そんな七海の横顔を麻里奈が見つめる。
少年のような目で魚を見続け、追いかける七海。
その横顔が麻里奈は何よりも大好きだ。
何時間経っても、飽きる事無く魚を見続ける七海と、その七海の横顔を見つめる麻里奈。
いつものデートパターンだ。
そして、夕方。
「ごめんね。」
並んで電車の座席に座りながら七海が頭を下げた。
「何が?」
「いつも魚見てばっかりで。」
「七海君はどうしてそんなに魚が好きなの?」
今まで聞いた事が無かった。
七海はにっこりと笑うと優しく話し出した。
「名前に海、が入っているから。」
「何それ~。」
思わず笑ってしまう。