こうべ物語



「僕の実家は西神中央なんだ。西神中央って、新興住宅地だから結構山奥で海と縁がなくてね。釣りが好きな親父が子供の頃、よく須磨の海釣り公園に連れて行ってくれたんだ。幼稚園の頃だったかな?凄く海が新鮮に思えてね。さらに初めて行った日に大きなアジが連れてね。それでも大人から見たらとても小さいサイズなんだけど。それが嬉しくて嬉しくて。それから、釣りが、海が、魚が好きになったんだ。」



「じゃあ、もう15年近く魚が好きなんだね。」



「そうだね。」



「私、魚を見ている七海君、大好きだよ。」



「麻里奈ちゃん…。」



七海の顔が少し赤らんだ。



「いつもごめんね。」



今度は麻里奈が頭を下げた。



「何が?」



「本当は夜も一緒に居たいのだけど、お父様がどうしてもうるさくて…。」



「気にしなくてもいいよ。お父さんを大切にして。」



「ありがとう、あっ。」



話しているうちに、七海が降りるはずの六甲道駅を通り過ぎてしまったようだ。



「たまには、摂津本山駅まで送って行くよ。」



「うん、ありがとう。」


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