こうべ物語





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



さくらは立派な表門をくぐると、真っ直ぐに歩いていった。


日曜日なだけあって、参拝客が数多くみられる。



(それにしても、今日も暑いな…。)



Tシャツ姿なのだが、暑くて仕方がない。


手を団扇代わりに仰ぎながら、社殿に着いた。


立派な真っ白な社殿。


その前まで歩くと、ポケットから5円玉を取り出し、軽く投げ込んだ。


手を合わせて頭を下げる。



「勝利が今日の試合、活躍しますように…。」



小さく呟く。


頭を上げて自分を納得させるように軽く2度頷くと、満足した顔を見せてくるりと振り返った。



(ハーバーランドまで行ってみるかな。)



辺りをキョロキョロと見渡しながら来た道を戻って行く。



(ん?)



右側を見ると、入ってきた門とは別の、少し小さめの門があるが、その脇で誰かがうずくまっている姿が見えた。


他の参拝客は気が付いていないのか、誰も声を掛けようとしない。



(どうしたのだろ?)



小さくうずくまったまま、動く気配がない。


さくらは何となく気になり始め、その人物に近づいて行った。


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