こうべ物語
さくらは、うずくまっている女性に声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
その声に反応し、女性が顔を上げた。
髪の毛は2つに束ねてあるが、明らかに乱れており、黒縁の眼鏡も汚れている。
顔も青白く、涙の跡がはっきりと残っている。
(制服…。)
見た感じは高校生のようだ。
「体調でも悪いのですか?」
「え、え…。」
気になりだすと、止まらない性格。
さくらは、ただ事ではないと思い、すぐに辺りを見渡した。
(私1人では何も出来ない。誰か助けを呼ばないと。)
その時、社殿から表門に向かって歩いている、大きな袋を持った上品そうな女性が目に入った。
(あの人なら、助けてくれそう…。)
直感でそう思うと、おもむろに声を掛けた。
「すみません、体調が悪そうな人がいるので、一緒に助けてもらえませんか?」