こうべ物語
「体調が悪そうな人がいるので、一緒に助けてもらえませんか?」
必死な顔で訴えてくる色黒の女性。
見た感じ、幼く見える。
(こんなに若い子が言ってくるのなら、助けない訳にはいかない。)
「どこにいるの?」
「こっちです。」
麻里奈は色黒の女性について行くと、門の脇で顔を隠してうずくまっている女性が目に入った。
制服を着ている。
「この人なんです。何だか体調が悪いみたいで。一緒に病院に運んでもらえませんか?」
制服を着ているが明らかに汚れていて、髪も乱れている。
麻里奈は、普通ではないとすぐに認識出来た。
「それは大変。分かった、私も協力するね。」
その声に反応して、うずくまっている女性が顔を上げた。
黒縁の眼鏡が、いっそう顔色の悪さを引き立たせる。
「病院に行かなくても、大丈夫ですから…。」
小さな声で呟く。
(そうは言っても、本当に調子悪そうだし…、それに…。)
麻里奈はチラリと隣にいる色黒の女性の顔を伺った。
とても心配そうな顔をしている。