こうべ物語
(この子も多分、知り合いじゃないのだろうな。でもこんなに心配そうな顔をしている。やっぱり助けてあげなきゃ。)
「ダメダメ。どこか悪いなら病院に行かなきゃ。立てる?」
麻里奈はすぐにうずくまっている女性の隣に近寄ると、腕を掴んで立ち上がらせようとした。
それに倣うように、色黒の女性も反対側に回る。
2人で一緒に立ち上がらせようとした途端、思い切り腕を振り払われた。
そのまま、ヨロヨロと立ち上がると、弱々しい目で見つめてきた。
「私…、3日間、お風呂に入ってないですから…。私なんか触ったら、汚れますから…。」
か細い声で伝えてくるその女性は少し怯えているようにも見えた。
(普通じゃない。普通じゃないから…。助けないと!)
どうしようかと空を見上げて、ふと思いついた。
「しかし、今日も暑いよね。これだけ暑いと、汗ですぐに服がべたついちゃう。お風呂に入りたいなぁ~。でも、1人じゃあ、寂しいなぁ。」
隣の色黒の女性にも聞こえるように独り言を言う。
麻里奈の思惑に気付いたのか、色黒の女性も合わせる様に空を見上げた。