こうべ物語



「麻里奈さんって…。」



「ん?何?」



「一体、何者なんですか?」



「何者って…。」



「いやぁ、さっきのタクシーの運転手さんも麻里奈さんの苗字聞いて驚いていたように見えたし、このレストランに着いてからも、なんだか偉い人が頭下げに来ていたし…。」



「私は、普通の一般市民よ。」



「普通の一般市民にわざわざ偉い人が挨拶に来ないですよ。それに、温泉施設初めて入ったみたいだし…。」



「さくらちゃんは凄いよね。ロッカーの鍵貰ったりシステム分かっていたから。」



「一般市民なら分かると思いますけど…。」



「そうなのかなぁ。」



「そうですよ。」



あくまで一般市民を言い張る麻里奈だったが、納得がいかないさくら。



「うーん、敢えて言えば、私じゃなくて、お父様に対して挨拶しているのよ。」



「お父様?」



「ん?さくらちゃん、どうしたの?」



「麻里奈さんって、お父様って呼んでいるのですか?」



「そうだよ。皆そうじゃないの?」



逆に質問されたさくらは赤くなって俯いた。


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