こうべ物語



「私は…。」



涼子が話し始める。



「可愛くないし、性格も暗いし、地味だし…。そんな事は自分自身が一番よく分かっているんです。」



さくらと麻里奈も一旦食事を止めて涼子を見つめた。



「小学生の頃からそうでした。周りから白い目で見られ…。だから、必死に目立たないようにしていました。なのに…。」



そのまま俯いて涙を拭う。



「私、さっきお風呂でね。」



さくらが微笑みながら話しかける。



「眼鏡を取った涼子さんを見て、凄く可愛いな、って思いました。」



「私も、涼子ちゃんって大人しくて思わず包み込みたくくらい可愛いな、って思うよ。」



麻里奈も同調する。



「そんな…。」



2人の優しさが心に響く。



「名前だって、私、涼子って…。いまどき『子』が付く名前なんて古いっていじめられたし…。」



「いやいや。私の方が古い名前ですよ。ひらがなだし。」



さくらが顔の前で手を左右に振りながら即座に否定する。


< 67 / 202 >

この作品をシェア

pagetop