こうべ物語
(ありがとうございました。)
JR神戸線の車内。
「いいから持って行って。」
帰りの電車賃まで麻里奈に出してもらった。
しかも数百円で済むのに1万円札を渡された。
涼子は携帯の画面を見ながら小さく頭を下げた。
先程さくらと麻里奈と一緒に撮影した写真。
『眼鏡を取った涼子さんを見て、凄く可愛いな、って思いました。』
『私も、涼子ちゃんって大人しくて思わず包み込みたくくらい可愛いな、って思うよ。』
(麻里奈さんとさくらちゃんが言うなら…。)
自分でも不思議な気がした。
偶然出会った初対面の2人の事が何だかずっと昔から知っているような気がして、そして、信じられる気がしたからだ。
(私…、クヨクヨしていても何も解決しないよね…。)
『助けたくなる事が涼子ちゃんの魅力だと思うの。だから、涼子ちゃん、そんなに抱え込まないで。見ている人はちゃんと見ていると思うから。』
顔を上げて、路線図を眺めた。
今、電車は神戸駅から兵庫駅に向かって走っている。