こうべ物語
「勝利…、どうしたの?何かあったの?」
「…何もないよ。」
素っ気なく答えて階段を降りようとする勝利の腕を思わず掴んだ。
「ぐっ。」
勝利が苦渋の表情を浮かべて素早くさくらの手を振り払った。
「勝利…。」
「…痛いんだよ。」
目を合わせる事無く呟く。
「もしかして…、先日の試合で…。」
肘を気にする仕草をしていた勝利の姿が蘇る。
「…野球肘、なんだ。」
「野球、肘…。」
「ずっと違和感はあったんだ。けれど、すぐに治ると思っていたんだ。」
「…。」
「でも、先日の試合中に痛めたみたいなんだ。」
「勝利…。」