こうべ物語
視線を落として呟く勝利を見たさくらは、少し悲しそうな表情を浮かべた。
『さくらちゃん、中学卒業まであと半年程だけど、最後まで勝利を支えてやってくれないか?』
(私に出来る事…。)
一緒に悲しんでも意味がないと感じたさくらは敢えて笑顔を見せて、勝利の頭をくしゃくしゃに撫でた。
「勝利、大丈夫だよ!すぐに治って、野球出来るようになるよ!」
明るく話しかけたさくらに向かって勝利は思い切り睨みつけた。
「お前に何が分かるんだよ!俺は、俺は…、野球が出来なくなったらもう終わりなんだよ!」
「勝利!」
さくらの声を無視して、駆け足で階段を降りて去っていく勝利の後姿を呆然と眺めた。
(勝利…。)
暫く動けなかった。
ただ…、涙だけが溢れた。
(勝利…、私…。)
《さくら×勝利② 終わり》