こうべ物語
両肩に優しい温かさを感じる。
誠也が涼子の肩をゆっくりと抱き寄せた。
「言ったじゃん。俺は大池さんの事、好きだって。」
「だって…。私なんて不細工だし、地味だし、何の取り柄もないし…。」
「そんな事、誰が決めたんだい?」
「…。」
誠也に告白された後、別のクラスの女子生徒達に無理やり土下座させられた場面が蘇る。
『不細工なのに、図々しくてごめんなさいと言え!』
「人は人だろ?俺は涼子が可愛いと思うし、素敵だと思うよ。」
(涼、子…。)
父親以外の男性に下の名前で呼ばれたのは初めてだ。
しかも今まで同性同世代の人間に下の名前で呼ばれる場合は、馬鹿にされている事がほとんどだ。
(私なんかの為に、待っていてくれた…。)