もう一度君に笑ってほしくて
「ねぇ…かず…」
声を掛けたのは、三男の将志だった。
「俺も一緒に食っていい?」
「うん。もちろん。珍しいね、たいちゃんがここで食べるの」
「あぁ、うん」
将志は母親が亡くなってから殆ど学校に行かなくなった。
食事も殆ど部屋で摂っていた。
「俺さ、月曜からちゃんと学校行こうと思って…」
「そっか。じゃあまた一緒に行こうね」
将志は和翔を凄く慕っていたし、逢沙とも仲が良かった。
「逢沙、これあげる…。気に入るか分かんないけど…」
将志は逢沙にウサギのぬいぐるみを持たせた。
「良かったね、逢沙」
「ほら、食べよう、逢沙」
いつもは逢沙は自分からは食事に手を付けなかった。
だけど今日は自分からスプーンを握った。
「今日は食べられそう?」
いざ食べようと手を動かした途端にスプーンを握った左手が震えだして逢沙はスプーンを落としてしまった。
結局、和翔が食べさせた2口で逢沙の夕食は終わった。
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