禁止すれすれ!?恋愛
 「じゃなくて……?」

 
 今度はさっきと違う意味で声が震えそうになる。

 下を向いてて裕介の顔が見えないから、どんな顔をしてるのか分からない。
 
 っていうかそんなこと考える余裕もない!

 耳元で微かに呼吸を感じて、体中に力が入った。

 
 「お前なんか……絶対認めねぇ……」

 
 そう小さく呟くと、裕介があたしを突き放した。

 
 「わっ!?」

 
 地面に両手を着いて顔を上げると、裕介はドアに向かっていて、あたしをチラリと見ると屋上を出て行った。

 あたしはそこに座ったまま動けなかった。


 
 気のせいかな……?

 耳元で呟かれた声が震えていたのは。 
 出て行く時、一瞬だけ見えた裕介の頬が濡れていたのは……



 裕介はまだ知らないけど……あたしはこの一週間のうちに浩太と一緒に住む。

 つまり、裕介と浩太と暮らすんだ。

 籍はまだ入れないけど、簡単な式を挙げることになってる。

 浩太がそうしたいって言ったんだ。


 まだ予定は決まってないけどね?


 
 だから早く和解したい。
 和解して、気まずいまま式を挙げたりしたくない。

 そう思ってるんだけど……やっぱり無理なのかな?


 屋上に設置されたスピーカーからチャイムが聞こえた。


 「教室に戻らなきゃ……」

 
 そう呟いたけど、裕介の微かに震える声と濡れた頬が忘れられなくて、結局教室に帰れなかった。

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