中年夫婦の日常茶番
ゆいは怖がりです
怖がりなくせに
深夜の散歩が大好きです

ある日
通ったことのない道を通ってみようってことになりました

狭い路地を抜け
少し開けた場所に出ました

街灯もなく
あたりは真っ暗

少し先に踏み切りが見える

アスファルトから砂利道に変わり
足元に注意しながら歩く

ふと顔を上げると
あることに気づきました

ここ
道の両脇が
墓地です

えぇぇ…

ゆいはまだ気づいてません

ゆいは僕よりも目が悪く
足元に注意がいってるので気づかないのでしょう

ここ歩きにくい
ゆいがそう言いながらゆっくり歩いてます

歩きにくいやろうけど急ごうか
そう言うと

なんで?
脳天気に聞いてきます

墓地だからだよぉぉぉぉ
とは言えず

まぁあれや
あとで話すし
とりあえずさっさと抜けよう
やんわりうながします

なになに?今言うて~
相変わらずのんきです

おめぇが怖がるだろうから言わねぇんだよ
察しろよ

とも言えず

そうこうしていると
真横にお地蔵様がならんだゾーンが

じゃっかん線香臭い

さすがにこれは気づい…

てない

どんだけ鈍いねん…

ね~なによ~?
足元だけを見ながらゆいが言う

あぁ
なんかもういいや

これ
そう言ってお地蔵様にライトを向ける

立ち止まって無言であたりを見渡すゆい

そしてフリーズ

ほらね

夫婦円満のコツは
上を向いて歩かないほうがいいときもある
これですね
< 16 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop