沖田総司と運命の駄犬
猪田「沖田助勤!良かったです!目が覚めて!」
しばらくして、僕の隊の猪田君が来た。
沖田「僕は、どれ位、寝てたの?」
猪田「2日です。梓、沖田助勤の側から、全然、離れず、看病してましたよ。それはそれは、忠犬のごとく。」
沖田「え?」
猪田「くくくっ。でも、やっぱり、やらかしましたね。一所懸命に、それも作ってたらしいけど、何やら、怪しい色です。それも、捨てておきましょうか?」
湯飲みに入った茶色の水。
僕は、それを受け取り、臭いを嗅ぐ。
沖田「あ・・・。」
ちょこの匂い。
猪田「どうされます?何が、入ってるかわかりませんよ?」
沖田「だいたい予想がついたから、これは、頂くよ。梓・・ずっと、僕の看病をしてたの?」
猪田「はい。代わると言ったんですが、『離れない!』って、まるで、恋仲のような夫婦のようでしたよ。」
沖田「何、言ってんの!でも・・・。それだったら悪いことしたかな・・・。」
猪田「明日の朝餉、梓に運ばせましょうか?」
沖田「そうだね。そうしてくれる?」
猪田「はい。ふふ。沖田助勤、変わりましたね。」
僕は、意味が、わからず、首を傾げる。
沖田「どこが?」
自分では、わからない。最近、よく言われることだ。
猪田「え?ご自身で、気付いてないんですか!?」
沖田「全く、意味がわからないけど・・・。」
すると、猪田君は、とんでもないことを言う。
猪田「梓の事を話する時は、とても、優しい顔をされます。凄く大事に、想われてるんだろうなぁって・・・。」
沖田「はぁ!?何かの間違いだよ!僕が“梓を”だなんて有り得ない!」
すると、猪田君は、クスクス笑った。
猪田「そっか。沖田助勤は、自分の気持ちにまだ、気付いてないんだ・・・。だったら、僕から一つ忠告です。」
沖田「何?」
猪田「ここには、梓の事を、沖田助勤と同じ目で、見ている人がいますよ。」
沖田「え?それって・・・。」
僕の頭に浮かんだのは、土方さんだ・・・。
土方さんは、梓の事、いつも、優しい目で、見ている。
猪田「沖田助勤は、ちゃんと、自分の気持ちを、わかって、行動に移さないと、取られちゃいますよ?何たって、敵は、おなごにモテまくりの強敵ですからね。」
やっぱり土方さんか・・・。
沖田「考え過ぎだよ!さっさと片付けるの手伝って!」
猪田「はい。」
僕は、寝間着を着替えながら顔を隠した。
もの凄く、顔が赤くなっているはずだ。
部屋も片付き、布団の横のちょこ水を手に取る。
沖田「梓、これ、僕に、作ったのかな・・・。」
僕は、湯飲みに口を付け、一口飲んだ。
ちょこの甘味と何これ少ししょっぱい。しかも何か初めての香りが、鼻から抜ける。
柚子か?
わからないけど、色々な物が、混じっている水だ。
でも、僕の好きなちょこが、混じっているのは、確かだから、勿体ないから捨てれない。
僕は、湯飲みの中を、全て、飲んだ。
どれだけ飲んでも、よくわからない味だな・・・。
そういえば、梓、どこ行ったのかな?
少し、キツく言い過ぎた。
でも、僕、そんな優しい顔になってるのかな?前に、永倉さんにも同じような事、言われたけど・・・。
僕が、梓に、惚れてる?
自分に問いかける。
ナイナイナイナイ!ナイ!
そんな事あるわけナイ!
僕は、布団を、頭まで被った。