沖田総司と運命の駄犬


朝起きて、ぼーっとしていると、廊下に、人の気配がある。




僕の部屋の前で、ウロウロしている。





僕は、外のウロウロしている主に声をかけた。



沖田「梓でしょ?入りなよ。」




梓「はい・・・。」




控え目な返事に、控え目に部屋に入ってきた梓。




梓「あ・・・。」





僕が、布団から起き上がろうとしているのを見て、手伝ってくれた。





沖田「ありがとう。」




梓「いえ。あの、昨日は、すみませんでした。」





僕は、素直に、謝った。



沖田「ううん。僕の方こそ、ごめん。ずっと、居てくれたんだってね。」




梓「はい・・・。あの、お粥を持ってきたんですが、食べれますか?」




沖田「うん。食べる。」




お粥の入った茶碗を渡された時に、包帯を巻いている梓の指に目が止まる。





沖田「どうしたの?これ・・・。」




僕は、指を軽く握った。




すると、バツが悪そうに、引っ込めようとしたから、少し、力を入れてしまった。





梓「あ・・・。」





沖田「ごめん。痛かった?これ、どうしたの?」




梓「あの、ちょっと、火傷して・・・。」






火傷って・・・。お勝手に入ったのか?




僕は、梓の包丁さばきや、釜戸の使い方を見て危ないと、判断し、出入り禁止としていたのだ。



沖田「火傷?まさか、僕との約束を破って、お勝手に入ったの!?出入り禁止にしたよね?」




梓「はい・・・。これを、作ってて・・・。」




お盆の上に、昨日と同じ茶色の飲み物。




沖田「あ・・・。ちょこ水。」




梓「熱中症には、これが効くので・・・。約束破って、ごめんなさい。」





熱中症?って暑気あたりのことかな?




沖田「やっぱり、梓が、作ったんだ。変な色だから、捨てるとこだったけど、甘いちょこの匂いがしたから・・・。」




梓「飲んで貰えて良かったです。」





僕は、渡されたお粥を、全て平らげた。




沖田「梓・・・。もうちょっと、こっちに来て?」




梓「はい・・・。」




僕は、横に、梓を来させると、抱きしめた。




梓「え?」





梓は、固まっている。




沖田「梓・・・。ありがとう。看病も、コレも。」





僕は、梓を抱きしめながら、火傷している指を撫でた。





沖田「僕のために、火傷までして、作ってくれて・・・。火を起こすのだって、お湯だって、梓じゃ大変だってわかるから・・・だから、嬉しいよ・・・。」





梓が、このちょこ水を作るのが、どれだけ大変だったかが、よくわかる。




だって、僕は、彼女の家事をずっと見てきて、ダメだと判断したくらいに酷かったから・・・。





僕の為に、火傷までして、僕の事をしてくれたのが嬉しかった。






梓「沖田先輩・・・。なんか、今日、変です。沖田先輩が、優しい。」




沖田「はぁ・・・。僕だって、素直に礼くらい言えるよ?」




梓「知りませんでした。でも・・・。沖田先輩が、目覚めてくれて、良かった・・・。」




そう言うと、梓は、安堵して、僕の胸に顔を付け、僕の背中に、腕を回して、泣き始めた。





僕は、しばらく、梓の背中をさすっていた。




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