沖田総司と運命の駄犬
沖田「梓・・・。」
僕は、梓に声をかけた。
すると、梓は、顔を上げたけど・・・。
僕の胸に梓の鼻水が延びて垂れた。
梓「あ・・・。」
嘘でしょ!?涙で濡らしてると思っていたそれは、鼻水だった。
沖田「ちょっと!汚っ!涙だって思ってたのに、鼻水だったって、何!?しかも、今の顔・・・。ぷっ。ほら、鼻水拭きなよ。」
梓「すみません。」
紙を渡すと、ズビーッと鼻をかむ梓。
どこまでも、わらしだ。
沖田「はぁ・・・。やっぱり、梓は梓か・・・。って、着物!」
梓「あ・・・。ごめんなさい!洗ってきます!」
沖田「いいよ!もう!梓に頼んだら、破れるし!こっちおいで?」
僕は、梓を、また、抱きしめた。
梓の顔を濡れた着物にグリグリとわざと押し付けた。
梓「ちょっと!ここ、私の鼻水の所!汚い!」
沖田「自分のだから、良いでしょ?」
梓「自分のでもヤダ!」
沖田「梓・・・。」
僕は、腕の中の梓に触れたくなった。
梓「え?」
愛おしい気持ちが溢れてきて、顔を寄せると、梓は、真っ赤になって、目を瞑る。
梓の息が、頬にかかるまで近付いたとき・・・。
グルルルルル・・・。
沖田・梓「え?」
二人の視線が、至近距離で合う。
キュルルルルル・・・。
梓の腹の虫が盛大に鳴った。
普通、こんな時に、お腹、鳴る?
本当に、この子は、色気より食い気だ。
そう思うと可笑しくなった。
沖田「ぷっ。あははははっ。やっぱり、梓は、色恋よりも食い気だね。くくく。」
梓「だって、まだ、朝ご飯、食べてないから・・・。」
沖田「食べに行ってきなよ?」
梓「はい!行ってきます!」
梓は、恥ずかしそうに、真っ赤になって、出て行った。
一人になった部屋で、ふと、今さっきの事を、思い出す。
梓の腹の虫が鳴らなかったら、僕、梓に、接吻してたよね・・・。
あの時、無性に、梓が、愛おしく見えて、触れたくなったんだ・・・。
僕が、梓に、欲情してる・・・?
ナイナイナイナイ!
僕は、首を横に振った。
でも、あの時、梓は、逃げなかった。
僕とあのまま接吻しても良かったって事?
って何も、深く考えて無さそう・・・。梓だし・・・。
沖田「はぁ・・・。欲求不満かな・・・。もうちょっと、元気になったら、誰かに、島原にでも連れてって貰おうかな・・・。梓に欲情するとか、結構せっぱ詰まってるって事だよね・・・。」
僕は、梓が、置いていった、ちょこ水を、飲み干して、布団に潜った。