沖田総司と運命の駄犬



それから、沖田先輩は、毎晩、島原に行って、帰ってこなかった。



梓「絶対、避けられてる・・・。コレって、ヤリ逃げ?」




それから、何かの警備に当たるとかで、沖田先輩も、土方さんも、他の人達も、皆、禁門のなんとかで出てしまいしばらく帰ってこなかった。




しかも、土方さんにキスされた・・・。




沖田先輩の伝言を聞いた後、抱きしめられて、キスをされたが、あまりにも、一瞬の出来事に、本当に、あったことなのか、わからなくなる。



梓「はぁぁぁぁ・・・。」




山南「これは、これは、盛大な溜息ですね。」




梓「すみません・・・。」




私は、ここしばらく、山南さんと一緒にいた。




梓「前は、沖田先輩から直接、言われたのに・・・。」




今度は、土方さんから、山南さんの所にいろと言われた。




山南「ふふっ。梓は、恋する乙女の顔になっていますね。」




梓「恋って・・・。そんな良いものじゃありません!ヤリ逃げですよ!あんなの!」




私は、山南さんに、愚痴を聞いてもらっていた。




山南「総司がねぇ・・・。くくくっ。そっか。総司が・・・。しかも、土方さんまでもが・・・。」




山南さんは、嬉しそうに、私の話を聞いている。



梓「訳わからない!」




山南「思ってるだけじゃ、何も伝わりませんよ?言葉にしないと。」




梓「そうですけど・・・。」




山南「その思ってることを、そのまま、総司に、ぶつけたら良いんですよ。で?梓は、総司に接吻されて、嫌だったんですか?」




嫌だった?




考えたことなかった。



梓「ビックリ・・あ・・驚きは、しましたけど、嫌では、なかった・・と、思います・・・。」




山南「そして、梓は、総司が、島原へ行くのが嫌なんでしょう?」




梓「それは、嫌です!だって、女の子を買うとか・・・。」




山南「して欲しくない?」




私は頷く。




山南「じゃあ、私が、島原へ行くのは?」




梓「山南さんが?みえない!っていうか、行きそうにないっていうか・・・行ってたら、驚きです。」



山南「僕の恋仲は芸妓です。」



梓「えぇぇぇ!?マジで!?」




ってことは、山南さんも、島原へ行くのか・・・。




私が、驚いていると、山南さんが、諭すように、優しく言う。




山南「その気持ちの差です。“嫌”と“驚き”の差。総司には、嫌で、私には、驚き。そして、触れられても、嫌じゃなかった。嫌なことを思い出させますが、攘夷の輩に襲われたとき、嫌だったでしょう?」




梓「はい。気持ち悪かったです。」




山南「じゃあ、後は、梓が、自分の気持ちに気付くだけですよ。総司は、きっと、土方君に、やきもちを妬いたんですよ。」




梓「沖田先輩が、土方さんに、ヤキモチ?まさか・・・そんな事・・・。」




山南「ないと言えますか?」



梓「だって・・・。物凄く、私に、当たりが強いし・・・。お美代さんとの時と、全然、違うし・・・。」



山南「それは、君に本心を見せられているんじゃないかな?それに、今は、強敵がいるから、焦るのかもね。」




梓「強敵?」



山南「梓って、鈍いんですね。だから、あの、おなご好きも、手こずってるのか・・・。これは、面白いですね。くくくっ。」




梓「あの・・・。山南さん、楽しんでませんか?」



山南さんは、何かを思い浮かべて、笑っている。




山南「あぁ。ごめん。まぁ、もうすぐ、お役目も終わって、二人とも、戻ってくるだろうし、土方君の事も、ゆっくりと考えれば、良いんじゃないかな?」



梓「はい・・・。って、土方さんの事もってどういうことですか?」



山南「あーあ。二人とも、不憫ですね。それは、自分で、考えなさい。」




梓「う゛。はーぃ・・・。」




私は、部屋に戻った。




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