沖田総司と運命の駄犬
沖田先輩は、私の手を握り、引っ張るように、歩いていく。
梓「お、沖田先輩っ!」
歩くの早いよ!
あっという間に、お菓子屋さんに着いた。
沖田先輩は、怖い顔で、お菓子を睨んでいる。
いつも、お菓子を、目の前にすると、嬉しそうな顔するのに、今日は、怒った顔してる。
私は、恐る恐る、声をかける。
梓「あのー。沖田先輩?何か、あったんですか?」
すると、冷たい氷のような、眼差しで、睨まれた。
沖田「はぁ・・・。ったく、やっぱり、何にも、わかってない。」
梓「ん?それって、どういう意味で・・・?」
沖田「もういいよ。それより、菓子を買おう。好きなの選びなよ。」
梓「はい!」
変だった沖田先輩も、機嫌が戻り、一緒にお菓子を選んだ。
沖田先輩は、近くの寺の境内に入り、石の上に座る。
沖田「梓も、ここに、お座り。」
梓「今の言い方、完全に、犬に対する言い方ですよね。」
沖田「当たり前でしょ~。だって、犬だし。」
梓「犬じゃないです!」
沖田「はい、お食べ。」
私は、お菓子を受け取り、口に入れる。
梓「んーっ!美味しい!土方さん、こんな美味しいお菓子くれる人が、いるなんて、良いなぁ!」
その言葉に、沖田先輩は、ピクッとする。
沖田「そうだね・・・。甘いもの嫌いなのにね・・・。」
そう言えば、前に、甘味処に、連れて行ってもらったとき、苦手って言ってたっけ・・・。
梓「苦手な物を贈られるって事は、土方さんの事、あんまり知らない人って事かな?」
沖田「もう、土方さんの話はいいよ。食べよう?」
私達は、一緒にお菓子を食べた。
沖田「梓・・・付いてるよ・・・。」
梓「え?」
付いている感覚、無いけど・・・。
沖田先輩が、私の顎に手をかけて、唇を拭う。
何度か拭って、唇の上で、指が止まる。
ずっと、無言で、見つめられている。
なんか、ドキドキしてきた・・・。
梓「お、沖田先輩?」
沖田「あのさ・・・こうやって簡単に、触れさせちゃダメだよ?僕以外には・・・。」
梓「え?それって、どういう・・・。」
意味か、聞こうとしたら、沖田先輩は、スッと立ち上がった。
沖田「さ!行くよ!」
そう言うと、沖田先輩は、スタスタと行ってしまう。
梓「ま、待って下さい!」
私が、沖田先輩に、駆け寄ると、沖田先輩は、嬉しそうに私の手を握った。
梓「あの!」
沖田「本当に犬だよね。呼んだら、喜んで、駆け寄ってくるとか・・・。今、尻尾が見えた。くくくっ。」
梓「あ!また、私の事、犬って!」
沖田「だって、仕方ないでしょ?そう見えたんだから。」
そう言うと、沖田先輩は、空いてる手で、私の頭を撫でた。
梓「あの!手、なんで繋いでるんでしょうか?」
最近・・・いや、キスしてから、二人で、外に出るときは、必ず、手を繋がれる。
すると、沖田先輩は、繋いでる手を見つめた。
沖田「あぁ。これ?2回も、脱走して、襲われてる梓が、それ言う?」
梓「う゛・・・。」
沖田「何だったら、首に縄を繋いであげようか?本物の犬みたいに。それでも良いけど?」
私は、首に、縄のリードを付けられ、引っ張り回されている自分を想像する・・・。
梓「手を繋いで下さい!」
ギュッと握ると、沖田先輩の手に、少し力が入った。
私達は、手を繋いで、屯所に戻った。
屯所に戻ると、沖田先輩の組の人に呼ばれて、沖田先輩は、見廻りに行った。