沖田総司と運命の駄犬
部屋に入ると、伊東さんの弟子の人とかがたくさんいて、楽しげに話をしていた。
しばらく、江戸の話を聞いていたが、ポツポツと人が少なくなっていった。
気付いたときには、伊東さんと二人きり・・・。
これ、マズい・・・。
梓「私もそろそろ・・・。」
立ち上がろうとすると、伊東さんに手で制された。
伊東「もう少しだけここに居なさい。」
梓「でも・・・。」
すると、伊東さんは笑い始めた。
伊東「くくくっ。あ・・・。すまぬ。余りにも、無防備で・・・。君の事を親のように心配する土方さんや沖田君の気持ちがよくわかる。くくくっ。」
梓「なんか私の事、バカにしてますか?」
伊東「バカになんて、していないよ。君と仲良くなりたかっただけだ。二人きりになりたかったのは、菓子が、君の分しかなかったからだよ。さぁ、食べなさい。」
梓「あ・・・これ・・・。」
伊東さんが、差し出してくれたお菓子は、近藤さんに貰って、沖田先輩に奪われ一口しか食べれなかった菓子だった。
私は、思わず、伊東さんを見た。
伊東「最初に梓を見たときに、沖田君に菓子を奪われて喧嘩していたでしょう?私も持っていたから、君にあげようと思ったんだ。」
梓「ありがとうございます!」
伊東「さぁ。お食べなさい。」
梓「ありがとうございます。」
私は、菓子をもらい、口に入れた。
梓「ん~!美味しい!伊東さん!ありがとうございます!」
嫌な人かと思ったけど、なんだ、私の勘違いだった。
良い人じゃん。
私が、菓子を食べているのを優しい眼差しで見つめる伊東さん。
伊東「くくっ。狼達が可愛がる気持ちが何となくわかります。梓には、不思議な魅力があるのですね。」
梓「そんな事ありませんよ。魅力があるなら、もっと優しくされても良いと思いますけど。」
私が口を尖らせると、伊東さんは、優しく笑う。
伊東「それは、誰のことを言ってるんでしょうねぇ?」
梓「誰って・・・。」
沖田先輩だけど・・・。
なんで一番に沖田先輩が出てくるんだろう?
きっと、一番、近くにいるからだ。
私の世話役だしね・・・。
沖田先輩は嫌がってるけど。
すると、伊東さんは、私の頭を撫でで、優しく言う。
伊東「梓と話していると、楽しいですね。知らない土地にきて、気を張ることが多いんですが、梓は、それを和らげてくれる。また、こうやって、話し相手になってくれませんか?」
梓「私で良ければ是非とも。」
伊東「ありがとう。では、また、何か菓子を見つけたらお誘いしますね?」
梓「はい!お菓子ありがとうございました!」
伊東「いいえ。ではまた。」
そう言うと、伊東さんは、お弟子さんに呼ばれて、何処かへ行ってしまった。