沖田総司と運命の駄犬
あっち側?こちら側?
それから、伊東さんに、よく呼ばれた。
そのたび、私は、伊東さんとお茶をしながら、色々な話をした。
この事を知ったら、沖田先輩や土方さんは、怒るかもしれないけど、何故か、誘われるのは、決まって、二人が、居ない時だった。
そして、今日も、美味しいお菓子と共に、二人きりで、お茶をしている。
伊東さんは、物腰が柔らかく、近藤さんや、山南さんとも仲が良い。
でも、土方さんと沖田先輩は、何故か、伊東さんを嫌っていた。
梓「皆、同じ組なんだから仲良くすればいいのに・・・。」
伊東「まぁ、土方さんは厳しい事を言わなければいけない立場だから仕方がない。それにしても、いつも、梓は、僕が出した物を美味しそうに食べてくれるから、見ていて気持ちがいいよ。」
梓「本当に美味しいからですよ。いつも、いつも、ごちそうさまです。」
伊東「ふっ・・・。本当に梓は、可愛いよ。」
梓「か、可愛いだなんて、そんな事っ・・・。」
伊東さんは、よく、私の事を可愛いと言って、頭を撫でる。
伊東「ところで・・・。君は、おなごの身でありながら、どうして、こんな男所帯に居るんだい?普通は、嫁に行く年頃じゃないか・・・。」
梓「あ・・・。」
私は、タイムスリップをして来た事を話した。
土方さんの事や、沖田先輩の事は、伏せたが・・・。
伊東「なるほど・・・。未来を知る者ということか・・・。それで、あの二人は・・・。」
梓「え?」
伊東「ん?あぁ、何でも無いよ。」
少し、怖い顔をしていた伊東さんだったが、元の優しい顔に戻った。
それから、伊東さんは、今まで以上に、私を誘うようになっていた。
私は、伊東さんと、最近、元気の無い山南さんの部屋で話したりする事もあった。
そんな時・・・。
沖田「ねぇ、梓・・・。最近、伊東さんに近付き過ぎてるよ。最初に言ったよね?気をつけてって・・・。」
沖田先輩は、私が、伊東さんと一緒に居ることが嫌らしく、機嫌が悪くなる。
梓「沖田先輩は、伊東さんをわかっていないんです。優しい人ですよ?」
沖田「そんなのわからない。どうとでも見せることは出来るでしょ?」
梓「沖田先輩は、伊東さんの事、何も知らないじゃないですか!何で、どんな人かもわからないのに、そんな毛嫌いするんですか?」
沖田「土方さんも僕も、嫌な予感がするからだよ!」
梓「そんな理由で、毛嫌いされる伊東さんが可哀想です!」
沖田「梓が、なんで、伊東さんを庇うんだよ!」
梓「沖田先輩が、伊東さんを悪く言うからですよっ!」
沖田「最近、伊東さんと二人きりで居ることも多いって聞いてる。僕、前に言ったよね?男と二人きりになるなって・・・。」
梓「伊東さんは、そんな変なことはしませんっ!」
沖田「本っっ当にバカなんだね・・・。そっか・・・。梓はバカだったね。何度も、危ない目に遭っても危機感無いし、土方さんの事も、勘違いしてたし・・・。」
すると、沖田先輩は、私にズィッと寄ってきた。
梓「何ですか?」
沖田「梓が、なぁんにもわかってないから教えてあげようと思ってね?僕も男だよ・・・。男と二人きりになったらどうなるか教えてあげるよ。」
沖田先輩は、そう言うと私を押し倒してきた。
梓「ちょっ・・・。沖田先輩!冗談は、止めて下さい!」
沖田「冗談?・・・冗談なんて言ってないよ?」
沖田先輩の手が、袴の裾から入って来た。
梓「っ!止めて・・・っ。」
沖田「止めてって言われて、止める男なんていないよ?」
沖田先輩は、私の首筋を舐めた。
梓「っ!ヤダッ!」
沖田先輩は、私の首筋を吸い上げて、胸の合わせを開いた。
なんで、こんな事をするの?
怖い・・・。
こんな冷たい目の沖田先輩、知らない・・・。
梓「沖・・田先輩・・・。止めて・・・っ。うっ・・・。うっ・・・。止め・・・っ。」
涙が、こぼれて、体が、ガタガタと震える。
すると、沖田先輩が、私の上からどいた。
沖田「わかった?こうなる事だってあるかもしれない。何かあってからじゃ・・・っ。」
パァン!
私は、沖田先輩の頬に平手打ちをした。
沖田「っ!・・・何、するんだよ・・・っ。教えてあげたのに・・・。」
梓「最っ低!伊東さんも土方さんも、こんな事しないもんっ!」
沖田「ハッ!本っっ当にバカ過ぎて呆れるよ!わかった。好きにすると良い。でも、僕は、もう、梓を助けないから・・・。勝手に、信じて、襲われて、バカを見とけば良いんじゃない?」
そう言うと、沖田先輩は、部屋を出て行った。
梓「うっ・・・。うっ・・・。うっ・・・。沖田先輩のバカァ・・・。うっ・・・。うっ・・・。」
胸が、えぐられるように痛い・・・。
沖田先輩に、見放された・・・。
組の中で、皆、仲良く出来たら良いと思っただけなのに・・・。
私は、しばらく寝転んで泣いた。