沖田総司と運命の駄犬
通じた気持ち
カタッ。
梓「ん・・・?」
ここどこ?
あ・・・。そっか・・・。角屋だ・・・。
あれから、寝てたんだ。
目の前に、誰かがいる気配がした。
梓「っ!あ・・・。伊東さん。」
暗がりの中で、伊東さんが、立っていた。
梓「すみません。私、寝ちゃってたみたいで・・・。」
伊東「良いんですよ。もう、宴は、終わりましたから・・・。」
梓「あ・・・。そうですか・・・。すみません。じゃあ、これもお返ししないとって、シワになってないかな?」
すると、伊東さんが、私の上に、のしかかってきた。
梓「え?」
伊東「本当に、君は、バカなんだね?沖田君が、よく君をバカって言ってる意味がよくわかるよ・・・。君が、そんなだから、近藤さんを始め、土方君も沖田君も親のようになるよね・・・。くくくっ。」
梓「あの・・・。言ってる意味がよくわからないんですけど・・・。それよりもどいてもらえますか?」
伊東「男に押し倒されてもまだわからない?バカだよね。本当に・・・。でも・・・。君が、バカなおかげで、私の計画が一つ進んだよ。それについては、礼を言わなくてはね?まぁ、君を僕の物にしてからだけど・・・。じゃあ、遠慮なく頂くよ?」
そう言うと、伊東さんは、私にキスをしようと顔を近付けてきた。
梓「ヤダ!」
私が、顔を背けると、伊東さんは、私の首筋に、唇を這わせた。
梓「ヤダ!沖田先輩・・・。助けて・・・っ。」
伊東「まだ、そんな事を言ってるの?今頃、沖田君は、天神とまぐわってると思うよ?」
梓「え?」
伊東「沖田君、天神の里音と今宵は、過ごすみたいだし。あっちはあっちで楽しんでるだから、私達も楽しもうか。まぁ、私の好みは、もうちょっと、豊満な方が、良かったけど。」
そう言うと、伊東さんは、私の胸を鷲掴みにした。
梓「ヤダ!止めてっ!沖田先輩・・・っ。う゛ーっ!沖田先輩っ!」
伊東「そうやって呼んでおけば良いよ。まぁ、そんな低い男みたいな声を出されても気分は乗らないけど・・・。君を物にして、完全に、あいつらから、離してあげるよ。どんなにバカでも、未来から来た者は手の内にある方が良いからね。」
梓「沖田先輩・・・。」
体を押し付けられて、内股に伊東さんの手が延びてきた時・・・。
スパーーン!
沖田「ねぇ、梓・・・。何やってんの?僕、言ったよね?他の奴に触れさせるなって・・・。」
梓「沖田先輩・・・。」
沖田「いつか、こうなると思ってたよ・・・。ったく、何度、こういう目に遭えば、わかるの?」
伊東「沖田君。邪魔しないでもらおうか?今、私達は、心を交わらせたところでね。これから、愛し合うんだ。」
梓「違っ!」
抵抗しようとした時、伊東さんにキスで唇を塞がれた。
梓「っ!」
チャキ。
沖田「止めろ・・・。」
今まで、聞いたことの無いくらいの沖田先輩の低い声がしたかと思うと、沖田先輩は、伊東さんの首元に刀を付けた。
伊東「やっぱり、君は、梓に惚れてたか・・・。」
え?沖田先輩が、私に惚れてる?
沖田「そんな事、今は、どうでも良いんですよ・・・。さっさと、退かないと、この部屋が、血に染まりますよ?」
冷たい沖田先輩の声は、殺気を纏っていて、今にも、伊東さんを斬ってしまいそうだった。
それがわかったのか、伊東さんは、ゆっくりと私の上から退いた。
沖田先輩は、私の手を掴み、立つ前に、引きずって行く。
梓「お、沖田先輩っ!腕!抜けるっ!」
沖田先輩は、明らかに怒っていて、引きずるのを止めてくれない。
そして、ある部屋に投げ入れられた。
沖田「湯浴みしてきて!」
梓「え?」
沖田「だから、湯浴みして、伊東さんが触れた所、100回は洗ってきて!あと、その伊東さんの臭いも消して来てよ!臭過ぎる!」
梓「あの・・・。」
沖田「聞こえなかった?早くしてっ!」
梓「はいっ!」
私は、お風呂に入り、伊東さんに、触れられた所を100回洗った。
体に残っている感触を消そうと思えば、100回はあっという間だった。
脱衣所には、芸妓さんの着物ではなく、男物の着物が、置かれていた。
梓「ん?」
棚の上に何かあるのが見えて、手を伸ばす。
梓「うわっ!」
何か粉のような物を被ってしまった。
『どうしたの?』
外で、沖田先輩の声がした。
外で、待っててくれたんだ。
梓「あ・・・。でも、この匂い・・・。」
私は、匂いを取ろうと、もう一度、お風呂に入ろうと着物を脱ごうとすると、外で、沖田先輩が言う。
沖田『いつまで、待たせるの?こんな所に突っ立ってるの恥ずかしいんだけど!』
沖田先輩が少しイライラしているのがわかる。
私は、すぐに出て行った。
沖田「っ!」
梓「す、すみません。媚薬の粉を被ってしまって・・・。」
そう、その粉は、以前、沖田先輩に没収された媚薬を粉末にして、置いてあった物をひっくり返してしまったのだった。
沖田「い、行くよ。」
そう言われて、手を引かれて、角屋を出た。
私は、沖田先輩の手の温もりに、また、泣きそうになった。