沖田総司と運命の駄犬
僕も、門の所まで行くと、近藤先生が、梓の頭を撫でて、菓子の袋を出した。
近藤先生には、悪いけど、きっと、梓は、貰ったら、全部、食べてしまう。
すると、後で、一緒に食べようとしていた菓子は、お腹一杯になって、食べれないだろう・・・。
沖田「はぁ・・・。」
僕は、後ろから、梓に、近付いた。
近藤「これは、江戸の土産だ。梓の好きそうな菓子だ。」
梓「ありがとうございます!」
梓が、受け取った瞬間、横から奪った。
梓「あ!沖田先輩!返してっ!」
沖田「あ~!これ、懐かしい!ありがたく頂きます!近藤先生、お帰りなさい!」
近藤「あぁ。総司。相変わらずだな。あまりいじめてやるなよ?」
沖田「いじめるだなんて、人聞きの悪い。そんな事してませんよ。」
ぴょんぴょん跳ねて、僕が頭の上に上げた菓子を取ろうと躍起になっている梓を横目に見る。
梓「あ!ちょっと!先輩にも、分けてあげますから、返してっ!それ、私が、貰ったんです!」
沖田「はぁ!?逆だよ?僕が、分・け・て・あげるよ。はい。あーん。」
梓「あーん。」
ひとかけらを取り出して、冗談を言うと、梓は、本当に、口を開けた。
沖田「ぷっ!本当に犬だね!くくくっ。」
こんなマヌケ顔すら可愛い。
梓「う゛・・・。条件反射でつい・・・って、でも、これ、美味しい!もっと下さい!」
沖田「はぁ!?あつかましいよ?もう、おしまい。」
これ以上食べたら、止まらないくせに。
梓「なっ!私が、貰ったんです!返してっ!」
沖田「もう、僕の物だしぃ!」
コレがあったらいつまでも言ってくるな・・・。
僕は、袋の菓子を食べ始めた。
梓が、僕を目掛けて、突進してくる。
僕はそれをヒラリとかわす。
沖田「新選組、一番隊組長の僕から、奪うなんて出来たら、梓に組長の座を譲ってあげるよ。」
梓「もぉ!バカにしてっ!沖田先輩!覚悟っ!えいっ!」
本当にこの光景って犬と遊んでるみたいだ。
沖田「くくくっ。梓、今の棒を投げられて、受け取る犬みたいだった!ほらほら、おいで、梓!」
もう一度、菓子を目掛けて、走るってくるから、僕は、梓を受け止めギュッと抱きしめた。
それでも、諦めず、手を伸ばしてくる。僕は、抱きしめた腕に力を入れた。
梓「痛い!痛い!ギブギブッ!」
沖田「どう?僕には、適わないでしょ?」
梓「う゛ぅ。はい・・・。」
シュンとする梓。
沖田「じゃあ、何て言うのかな?ん?」
梓「・・・降参します・・・。」
沖田「はい!良くできました。」
僕は、もうひとかけらの菓子を梓の口に、放り込んだ。
沖田「これは、おまけだよ。僕って優しいなぁ。」
僕は、残りの菓子を、全て、平らげた。
梓は、固まり、口をポカンと開けて、僕を見ていた。
梓「う゛ー・・・。」
梓は、僕を恨めしそうに見ている。
僕はニヤリと笑った。
沖田「いつでもかかっておいでよ。」
幹部に召集がかかり、そのまま、大部屋に向かう。
まぁ、近藤先生が帰ってきたんだから会議になるのは仕方ない。
あの菓子は、会議が終わってから、梓と食べよう。