沖田総司と運命の駄犬
嫌な予感~沖田side~



それから、しばらくして、僕は、風邪を引いて熱を出してしまった。




隊務も少し休んで、床にいる。




沖田「はぁ・・・。つまんない・・・。」





まぁ、熱はすぐに下がるだろう。




でも・・・。




気になることがある。




梓と伊東さんだ。





隊の子達や他の隊の子から、梓が、伊東さんの部屋によく出入りしていると報告を受けていた。





それが、僕が、見廻りとかで居ないときだから、質(タチ)が悪い。




沖田「本っ当に、梓は、人の話を聞かない・・・。ったく、世話役の身にもなってよね。」




僕は、前に、梓から貰ったお守りを見ながら呟いた。





今、梓は、薬師の所にお遣いだ。





大丈夫かな・・・。





菓子なら、見た目でわかるけど、薬は、梓には、わからないだろう。




しかも、見た目だけは、大人だ。






薬師が教えてくれるとは思えない。





沖田「別の人に頼めば、良かった・・・。」





そんな事を考えていると、梓が、帰ってきた。





梓「沖田先輩、大丈夫ですか?起きてますか?」





沖田「うん。起きてる。」




梓は、盆に、“粥らしき物”と、薬の袋を乗せてやってきた。




梓「お粥、作ってきたんです!食べて下さい!」




沖田「う、うん。コレ・・・食べれる?」




粥の中には、見たことのない緑、茶色、黒と、嫌な予感しかしない色が混ざっている。



梓「ちょっと!失礼です!ちょっと、大変だったけど、何とか出来たんですから!薬の先生が、何か食べてからって言ってたし!はい!あーん!」




僕は、差し出される匙をジッと見つめる。




これが、普通のおなごなら嬉しい限りだ。




好いてるおなごの看病を受けて、あーんまでしてもらってる。




しかし・・・。





梓だ・・・。





この差し出される匙が、毒に見えるのは、僕だけだろうか?




梓「ほら!早く!こぼれますよ?」




僕は、覚悟を決める。




パクッ。




沖田「!!!!!!!・・・っおっえぇぇぇぇ!!!!!!ゲホッ。ゲホッ。ゲホッ。何を・・・入れた!?」




焦げ臭いのは、焦がしたと予想がついたが、何か、別の物が入っていて、口から、そして、腹の底からも気持ち悪い。



僕は、刀を取って、梓の首に這わせた。




梓「え・・・。えーっと・・・。麦とぉ・・・栄養があるって聞いた根っことぉ、草と、ムカデ?あと石田散薬!とお酒と・・・。」





沖田「石田散薬は、打ち身でしょうがっっ!それに、何だよ!根っことか草って!」




梓「さぁ?」




沖田「『さぁ?』じゃない!何でも入れたら良い訳じゃない!」




梓「だってぇ、沖田先輩に、早く、元気になって欲しくて・・・。」




ちょっと待って・・・。



沖田「・・・ムカデって、どこで手に入れたの?」




確か高い代物だ。




梓「あぁ!それは、近くで遊んでた子供・・・わらしが捕まえてくれたんです!」




沖田「まさか、何もせずにそのまま鍋に・・・。」





梓「はい!怖かったんですけど、頑張りました!」




沖田「おえぇぇぇ・・・。」



もうダメだ・・・。





僕は、刀の斬り合いでなく、この駄犬に殺される。





沖田「しかも、粥焦がしたでしょ?」




梓「あ!わかっちゃいました?焦げた所は、外したんですけど・・・。」



沖田「はぁ・・・。粥は、焦げたら、全体に匂いが移るよ・・・。もう、薬、くれる?」




梓「もう、食べないんですか?」




沖田「食べれるわけっ!・・・いや・・・食欲無いから・・・。」




まぁ、こんなだけど、一応、作ってくれたし・・・。





僕は、薬を飲んで眠った。
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