沖田総司と運命の駄犬

永倉「おい、総司。行くぞ。」



沖田「は、はい・・・。」




梓は、どこに行ったんだ?



僕は、仕方なく、そのまま、角屋に皆と行った。



部屋に入り、周りを見渡したけど、梓が居ない。





来てないのか・・・。




すると、席を外していた伊東さんが戻ってきた。






伊東「皆さん!見て下さい!今宵、うちの姫が、着飾ってくれましたよ!」




沖田「っ!」




そちらを見ると、梓は、芸妓の格好をしている。





何やってんだよ。




僕、言ったよね?僕以外の前でおなごの格好をするなって・・・。





梓「う゛。」




近藤「ん?梓か?おぉ!綺麗になって!こっちに来てよく見せてくれ!」




梓は、近藤先生にお酌を始めた。





近藤「梓も召し物、一つでこんなに変わるのか!そういえば、総司と外に出ているときは、よくおなごの格好をしていたな!」




このモヤモヤとイライラが止められない。




僕は、梓に怒りをぶつけるように嫌みを言う。




沖田「衆道に間違われて町で噂されるのが嫌だっただけです。」





近藤「そうか?町の者に、総司が、嫁を娶ったのかと聞かれたぞ。」




沖田「なんで、僕が・・・。迷惑です。」




梓「っ!」





そう言った瞬間、梓は傷付いた顔をした。




何で、梓が、そんな顔するんだよ。





おなごの格好をしたのは、自分でしょ?





土方さんが、僕に来いと、目配せした。




ハイハイ・・・。





僕は、立ち上がり、土方さんと梓の元に行く。





土方「お前・・・。俺の言ってたことわからなかったのか?そんな格好して・・・。」





梓「だって、伊東さんが・・・。」





僕は、梓を見て言う。





沖田「梓は、あっち側になったんだね・・・。」





梓「あっちって何ですか?」





沖田「知らない?伊東派と土方派だよ。」





梓「そんなのなってません!」





沖田「僕は、僕以外の前でおなごの格好も許さなかったよね?それなのにこんな・・・。」





梓「私も町娘の格好かと思ってたので・・・。」





沖田「そもそも、おなごの格好してるんじゃないか。僕は、するなって言ってたよね?もう、僕の言うこと聞けないみたいだし、伊東さんに可愛がってもらえば?って、もう、可愛がってもらってるか?」





梓「なんでそんな事、言うんですか?」





目をウルウルさせて、声を震わせて、今にも、泣きそうになるのを、グッと堪えている。




チクリと胸が痛んだが、見ないフリをした。


< 180 / 222 >

この作品をシェア

pagetop