沖田総司と運命の駄犬
永倉「おい、総司。行くぞ。」
沖田「は、はい・・・。」
梓は、どこに行ったんだ?
僕は、仕方なく、そのまま、角屋に皆と行った。
部屋に入り、周りを見渡したけど、梓が居ない。
来てないのか・・・。
すると、席を外していた伊東さんが戻ってきた。
伊東「皆さん!見て下さい!今宵、うちの姫が、着飾ってくれましたよ!」
沖田「っ!」
そちらを見ると、梓は、芸妓の格好をしている。
何やってんだよ。
僕、言ったよね?僕以外の前でおなごの格好をするなって・・・。
梓「う゛。」
近藤「ん?梓か?おぉ!綺麗になって!こっちに来てよく見せてくれ!」
梓は、近藤先生にお酌を始めた。
近藤「梓も召し物、一つでこんなに変わるのか!そういえば、総司と外に出ているときは、よくおなごの格好をしていたな!」
このモヤモヤとイライラが止められない。
僕は、梓に怒りをぶつけるように嫌みを言う。
沖田「衆道に間違われて町で噂されるのが嫌だっただけです。」
近藤「そうか?町の者に、総司が、嫁を娶ったのかと聞かれたぞ。」
沖田「なんで、僕が・・・。迷惑です。」
梓「っ!」
そう言った瞬間、梓は傷付いた顔をした。
何で、梓が、そんな顔するんだよ。
おなごの格好をしたのは、自分でしょ?
土方さんが、僕に来いと、目配せした。
ハイハイ・・・。
僕は、立ち上がり、土方さんと梓の元に行く。
土方「お前・・・。俺の言ってたことわからなかったのか?そんな格好して・・・。」
梓「だって、伊東さんが・・・。」
僕は、梓を見て言う。
沖田「梓は、あっち側になったんだね・・・。」
梓「あっちって何ですか?」
沖田「知らない?伊東派と土方派だよ。」
梓「そんなのなってません!」
沖田「僕は、僕以外の前でおなごの格好も許さなかったよね?それなのにこんな・・・。」
梓「私も町娘の格好かと思ってたので・・・。」
沖田「そもそも、おなごの格好してるんじゃないか。僕は、するなって言ってたよね?もう、僕の言うこと聞けないみたいだし、伊東さんに可愛がってもらえば?って、もう、可愛がってもらってるか?」
梓「なんでそんな事、言うんですか?」
目をウルウルさせて、声を震わせて、今にも、泣きそうになるのを、グッと堪えている。
チクリと胸が痛んだが、見ないフリをした。