沖田総司と運命の駄犬
この僕が、無縁だと思っていた物を買うなんて!~沖田side~
心を通じ合わせてから、僕達は、どこへ行くのも一緒だった。
いつものように、手を繋いで、歩いていると、梓は、小間物屋の前で足を止めた。
梓「可愛い!」
梓は、簪を見つめて、目をキラキラさせている。
でも、僕は、その店の奥に置かれたものに目がいった。
『お好きな絵柄を彫ります。』
それは色とりどで塗られた綺麗な花などが彫られた櫛だ。
櫛か・・・。
櫛といえば、求婚するときに相手に、贈るもので、僕には、無縁の物だってずっと思ってた。
けど・・・。
梓の方をチラリと見ると、梓は、簪や、紅などを見ている。
僕が、これを渡せば、梓は、受け取ってくれるだろうか?
梓の事だから、普通に、贈り物として、受け取るんだろうな・・・。意味なんか、考えずに・・・。
梓と夫婦になったら・・・。
きっと、家事なんか、全部、僕がやる羽目になるんだろうな・・・。
でも、ちゃんと教えていけば何とかなるかな?
「贈り物ですか?」
その声に、ハッとして、顔を上げると、店の主人が、にこやかな顔で、目の前にいた。
沖田「あ・・・いや、その・・・。」
少し顔が赤くなる。
そんな僕に、主人は、優しく、説明してくれる。
主人「一生物ですのでね、こちらの物とか、飽きが来ず、どんな着物にも合って、おなごに人気ですよ?」
沖田「へ、へぇ。」
主人「あちらの方なら、こういった色も、お似合いでは?」
主人が、チラリと梓を見ながら、櫛を並べる。
主人「柄は、お客様のご希望で、彫らせて頂きます。梅の花とか人気ですよ?」
梅の花って、土方さんの好きな花だ。
沖田「梅の花はいいです。すぐに彫って貰えるんですか?」
主人「少しお時間は頂きます。」
沖田「じゃあ、この櫛で、こういう絵を掘って欲しいのですが・・・。」
僕は、犬の絵と団子の絵を紙に描いた。
主人「ふふっ。この櫛を見ただけで、奥方様がどういう方かわかりますね。」
沖田「花より団子って感じのおなごです。」
主人「お二人は、想い合っているのですね。」
沖田「は?」
主人は、そう言うと、ニコリと笑った。
僕は、いつの間にか、櫛を頼んでいて、お金を支払っていた。
店を出たら、梓は、嬉しそうに、僕に少し寄りかかっていた。