沖田総司と運命の駄犬
やっぱり私は・・・。
数日後の夜。
私の事情を知ってる人で、送迎会を角屋で開いてくれた。
私は、皆にお礼を言い回った。
沖田先輩は、少し前から、別室へ行ってしまったようだった。
私は、沖田先輩を探した。
すると、前から酔っ払いが近付いてきた。
「ははっ。おなごみてぇな奴だな。なぁ、一緒に飲もうぜ!来いよ!」
腕を掴まれて、引きずられる。
梓「ちょっと!止めて下さいっ!連れが・・・。」
「良いじゃねぇか。お前におなごのべべ着せて遊んでやる。な?」
梓「ヤダっ!」
部屋に連れ込まれそうになったとき、私を掴んでいた男の手が払われた。
「痛ってぇな!何しやがる!」
沖田「それは、こっちのセリフですよ。今宵の主役を連れて行かれてはうちはただの飲み会になるじゃないですか。」
「あんだぁ?てめぇ?」
沖田「何ですか?なんなら、外に出てお相手致しましょうか?」
梓「沖田先輩っ!」
私が名前を呼ぶと、男は青ざめた。
「沖田?沖田って・・・まさか、新選組の・・・。」
沖田「よくご存知ですね。はい。僕は、新選組 一番隊組長の沖田ですが?」
「ははっ・・・。いや・・・じょ、冗談だよ・・・。すまなかったな。」
そう言うと、男は、逃げるように去って行った。
沖田「はぁ・・・。最後の最後まで迷惑かけていくって梓らしいね。」
梓「すみません。」
沖田「ちょっと、風に当たろうか。」
梓「はい。」
私達は、外に出て、少し歩くと、河辺まで来た。
沖田先輩と並んで座った。
梓「沖田先輩。たくさん、迷惑をかけてすみませんでした。」
沖田「本当に、迷惑ばっかりだった。」
梓「でも、私・・・。沖田先輩に出逢えて良かったです。これ、感謝の気持ちです。良かったら使って下さい。」
沖田「何?・・・っ。これ・・・っ。」
梓「へへっ。これ、沖田先輩の好きな言葉と、私と沖田先輩!」
沖田先輩の好きな言葉と犬の絵と団子の絵を描いてもらったのだ。
ギュッ。
梓「え・・・?」
沖田先輩に抱きしめられた。
抱きしめられた沖田先輩の体は、少し震えていた。
沖田「な・・何なの?これ・・・っ。こんな有名な書家の先生に、こんな・・・っ。こんな絵を・・・っ。」
梓「確かに、絵は描かないって言われたんですけど、お願いしたら、描いてくれました。」
沖田「そっ・・か・・・。梓・・・。幸せに・・・ね?」
梓「はい。」
私は沖田先輩の腕の中で沖田先輩の匂いを胸一杯吸い込んだ。
離れたくない。
沖田「梓・・・っ。」
ギュッと抱きしめられた腕に力を入れられた。
少し離れて見つめ合う。
このままキスしたい。
目を瞑ると、沖田先輩が息を飲んだのがわかったが、その後・・・。
ギュッ。
梓「痛い!」
目を開けると、頬をつねられた。
沖田「変な気、起こすんじゃない!」
私は、真っ赤になった。
こうして、私送迎会はお開きになった。