沖田総司と運命の駄犬
そこから、梓の葬儀をしたが、ハッキリと覚えていない。
梓が、死んだなんて、思えなかったからだ。
なんだか、夢を見ているようだった。
僕は、ずっと持っていた櫛を取り出した。
沖田「梓・・・。僕、これが、現実に起こってることだなんて思えないんだ・・・。夢を見てるみたいだ・・・。これね・・・受け取ってくれる?梓には、わからないかもしれないけど、これ、求婚してるんだよ?」
僕は、梓の髪の毛に、櫛を挿した。
沖田「似合ってる。・・・梓・・・僕は、生涯、君だけだから・・・。」
梓を入れた桶の上に土が乗っていき、見えなくなった。
僕は、梓の墓の前に、ずっと座っていた。
信じられないよ・・・。
梓・・・会いたいよ・・・。
ねぇ、梓。僕は、これからは、この命は、近藤先生の為に使う事にするよ。
まぁ、梓に出逢う前は、そうだったから、元に戻っただけかな?
すると、後ろから声をかけられた。
土方「いつまでいるんだ?帰るぞ・・・。」
沖田「はい・・・。」
二人並んで歩く。
僕は、土方さんに話しかけた。
沖田「土方さん、僕、近藤先生のお役に立つように、今以上に頑張りますから・・・。」
土方「その前に、お前は、病を治せよ。」
沖田「どうせ、死ぬなら、近藤先生のお役に少しでも立って死にたい。それは、許してくれますよね?」
土方さんは、僕をジッと見つめた。
僕が、本気で言ってるのをわかってくれたみたいではフッと寂しげに笑う。
土方「チッ。本当に、史実通りだ・・・。お前くらい外せよ。バカ・・・。」
土方さんは、はぁ・・・と溜め息をして僕を見つめる。
土方「なるべく無理はするなよ・・・。」
そう言って、僕の肩をポンと叩いた。
僕は、土方さんに、深くお辞儀をした。
いくら、僕が、隊務を勤めたいと言っても、副長が、ダメと言ったら、ダメなのだ。
土方さんは、許してくれた。
本当は、寝ておけと言いたかっただろうが、僕の気持ちを汲んでくれた。