沖田総司と運命の駄犬
しばらく、近藤さんが歩いてどこかの部屋に入った。
近藤「お!そうだ!コイツをお前に持ってきたんだ。」
私は、近藤さんに持ち上げられて、布団で寝ている人の前に出された。
近藤「黒猫だ。いきなり、俺の部屋に来て、飛びついてきた。黒猫は、肺の病を治すと言うだろう?だから、コレを側に置いておけ。」
眩しくて、目を瞑っていたが、この感じは・・・。
振り向くと、布団を口元まで被った沖田先輩が寝ていた。
梓「沖田先輩っ!」
私は、沖田先輩に抱きつこうとしたら、沖田先輩の顔にぶつかった。
沖田「痛いっ!」
どうしたの?沖田先輩・・・。
顔色が悪いし、やせ細っている。
梓「大丈夫ですか?」
そう言うも、自分の声は、猫の鳴き声にしか聞こえない。
私は沖田先輩の顔を舐めた。
沖田「くすぐったいよ!」
沖田先輩・・・。私だよ?梓だよ。わからないの?
それでも、舐めるのを止めないでいると、沖田先輩は、私の頭をクシャクシャっと指で円を描いた。
くすぐったいよ。
沖田「コラッ!僕が何も出来ないと思って!」
私達が、じゃれていると、近藤さんが嬉しそうに言った。
近藤「お前たちを見ていると、梓と二人でじゃれていた時を思い出す。」
沖田「この黒猫がですか?僕は、梓を、ずっと犬だって言ってたのに、猫になって戻ってくるって、確かに、梓らしいですけど・・・。」
しばらく、話していると、近藤先生は、撃たれた肩が痛むということで、出て行った。
私は、布団に潜ると、沖田先輩の着物の中に入り込んだ。
沖田「お前は・・・っ。」
さっき、近藤さんが、病を治してって言ってた。
肺の病気・・・。
私に治せるかわからないけど、近藤さんが言うなら、治せるかもしれない。
私に何が出来るのかな?
今、出来るのは・・・舐めてあげることだけだ。
私は、沖田先輩の肺辺りを舐めた。
沖田「ちょっ・・・っ。」
すると、沖田先輩は、ピクリと揺れて、少し甘い声を出している。
あ・・・。
この辺りって、沖田先輩が気持ちいいって教えてくれた場所だ。
沖田「ちょっと、止めてよ!梓っ!・・・え?」
沖田先輩は、私を抱き上げて、少し赤くなっている。
私もその顔を見たら、頬に熱が集まる。
すると・・・。
沖田「梓・・・なの?」
気付いてくれた。
沖田先輩が、姿の変わった私でも梓だって気付いてくれた・・・っ。
梓「そうですっ!私、梓です!」
そう返事したけど、聞こえてきた私の声は、猫の鳴き声だった。
沖田「何でっ・・・っ。猫!?あれだけ犬って僕が言ってたのに・・・っ。」
沖田先輩は、私を抱きしめて、泣いているようだった。
私も沖田先輩の胸に頬をすり寄せた。
しばらく、抱き合っていると、沖田先輩は、ジッと私を見つめた。
沖田「君は、僕の大事な大事な女(ひと)にそっくりだ。君の名前は、僕の大事な女の名前をあげるね。梓?」
大事な人。
私の事、そんな風に想っててくれたんだ・・・。
遊びじゃ無かったんだ。
私も沖田先輩が大事な人です!
一所懸命、そう言おうとしているけど、やっぱり、私の口から出てくる言葉は、にゃーんという鳴き声だけだった。